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ビジネスモデル特許

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「ビジネスモデル」と「ビジネスモデル特許」の違い

「ビジネスモデル」は、平たく言えば、ある事業でお金儲けをするための仕組みや考え方と捉えることができます。

一方、「ビジネスモデル特許」は、コンピュータや携帯電話、インターネットなどのハードウエアにソフトウエアを組み込んで、ビジネスモデルの全体又は一部を実現する発明に付与される特許と捉えることができます。ただ、コンピュータ等のハードウエアは既に世の中にあるものがほとんどですから、実質的には、ビジネスモデルの全体又は一部をコンピュータ等のハードウエアを用いて実現するソフトウエアの発明に特許が付与されることになります。

ビジネスモデル特許の登録要件の特殊性

ビジネスモデル特許も、他の技術分野と同様、特許と実用新案との違いの「発明の登録要件」で示した6つの要件をすべて満足する必要があります。

これらのうち、「発明であること」、「新規性」及び「進歩性」にポイント絞って、ビジネスモデル特許の登録要件の特殊性について、例を挙げて説明します。

1.発明であること

特許法第2条第1項には、「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうと規定されています。

ビジネスモデル特許以外の技術分野では、この定義が問題となる場合はほとんどありませんが、ビジネスモデル特許では、この定義が問題となることが少なくありません。

例えば、店舗で買い物をした場合、支払金額が1,000円ごとに1ポイント付与してポイントカードにスタンプを押捺していくポイントサービスシステム(以下、「スタンプポイントサービスシステム」という。)があります。このスタンプポイントサービスシステムでは、例えば、10ポイント(10個のスタンプ)が貯まると、10個のスタンプが押捺されたポイントカードを回収するとともに、1,000円分の値引きをするとします。

このスタンプポイントサービスシステムはリピータを増やして売上げ増加を狙うという点でビジネスモデルではあります。しかし、それだけでは店舗が勝手に取り決めたことですので、「人為的な取り決め」であり、「自然法則」(特許法2条1項)ではありません。また、ポイントカードにスタンプを押捺することは店舗で働いている人間が行う行為ですので、「自然法則を利用した」(特許法2条1項)ものでもありません。したがって、このスタンプポイントサービスシステムは「発明」の定義に該当せず、「発明であること」の要件を満たしません。

これに対して、ソフトウエアをホストコンピュータと複数のレジスター(POS端末)が接続されたネットワークシステムなどのハードウエアに組み込んで利用することにより、ポイントサービスシステムのビジネスモデルの全体又は一部を実現する場合には、ホストコンピュータなどのハードウエアが「自然法則」を利用していますので、「発明」の定義に該当することになります。したがって、このようなビジネスモデルを実現するソフトウエアは、「発明であること」の要件を満たすことになります。このようなビジネスモデル特許としては、例えば、特許第3673511号公報に開示された 「ポイントサービスシステム」 があります。

2.新規性

ビジネスモデルを実現するソフトウエアが「発明」であっても、既に世の中に知られているため、新しくなければ、特許が付与されません。新しくないものは特許を付与する価値がないからです。世の中に知られていない発明は、「新規性」があるとされます。

ここで注意しなければいけないのは、たとえ発明者自身であっても、特許出願前に、他人に発明の内容を教えたり、自ら発明に該当する物や方法あるいはビジネスモデルを実施したりした場合には、その発明は「新規性」がないということです。

 ただ、ビジネスモデルを既に実施している場合、例えば、上記のポイントサービスシステムのビジネスモデルを既に自分の店舗で行っていても、具体的に実現するソフトウエアを第三者が外部から見ることができない状態で実施している場合には、そのソフトウエアの発明は、「新規性」の要件を満たす場合があります。

なお、発明者自身が実施した場合でも、その行為をした日から1年以内に特許出願すれば、「新規性」については救済されます。しかし、他人にアイディアのヒントを与えてしまうデメリット等を考えれば、特許出願を先にする方が良いことは言うまでもありません。

3.進歩性

ビジネスモデルを実現するソフトウエアが「発明」であって、世の中に知られていない場合であっても、同業他社が簡単に思いつく場合には、そのような発明には特許が付与されません。人は現在あるものに日々改良、工夫を加えてより良いものに改善しようと努力するのが常ですから、同業他社が簡単に思いつくレベルの発明は特許を付与する価値がないからです。同業他社が簡単に思いつかないレベルにある発明は、「進歩性」があるといわれます。

また、ビジネスモデル特許を含めたソフトウエアの発明の場合、従来人間が直接行っていた行為を単にコンピュータやインターネットを利用して実現する発明は、「進歩性」がないとされています。上記ポイントサービスシステムを例に取りますと、従来店舗の従業員がポイントカードにスタンプを押捺していたものを単にコンピュータとインターネットを介して行うように置き換えただけの場合がこれに当てはまります。

これに対し、ビジネスモデル自体が新しく、このビジネスモデルを実現するソフトウエアが新しい発明は、「進歩性」があると判断される可能性があります。また、ビジネスモデル自体は新しくなくても、このビジネスモデルを実現するソフトウエアが同業他社が簡単に思いつかないレベルにある発明は、「進歩性」があると判断される可能性があります。

ビジネスモデル特許の特許査定率

特許庁HPビジネス関連発明の最近の動向についてによりますと、「当初低調であった特許査定率(グラフ2)は年々上昇しており、近年は技術分野全体の特許査定率と同程度の70%台で推移しています。」とのことです。